有楽町(銀座)にある丸の内ピカデリーという映画館に、3面ライブスクリーンなる設備がある。普通のスクリーンを横に三つ並べたような形状で、すなわち通常のシアターの三倍の情報量を画面に映し出せるというわけだ。
ちなみに日本でもう一カ所、熊本にも同じ設備がある。まだ国内に二カ所しかないらしい。
そのスペシャルな映画館で今上映されているのが、『ヒプノシスマイク -Rule the Stage- OSAKA vs IKEBUKURO』。
正式タイトルはめちゃくちゃ長い(かつ上記で合ってるのかいまいち自信がない)のだが、かの声優×ラッププロジェクト『ヒプノシスマイク』の舞台版である、通称ヒプステだ。
それを映画にしたものが公開されている。が、今しかやっていないので、ヒプマイを知ってる人も知らない人もヒプステを見たことがある人もない人も、いますぐ全員この映画を見てほしい。
3面シアターは東京と熊本にしかないが、通常スクリーンなら全国でやっている。そして誠意あるブロガーなら通常版もちゃんと観てから記事を書くべき、というそれは本当にまったくもってその通りでしかないのだが、そんなことしてる間に映画が公開終了してしまっては取り返しがつかない。
なのでいまわたしは書いています。3面ライブスクリーンにめちゃくちゃ感動しているので。
ヒプステ映画(とくに3面ライブスクリーン)を見てほしい理由はざっくり3つあります。
一つずつ説明します。
完全に映画館が現場
ライブが好き、舞台が好き、アイドルやアーティストが好き、という人たちは、自分の好きな人やモノを観に行くことをよく「現場に行く」と言う。
ここで言う現場は「事件は現場で起こってるんだ…!」のそれと近いニュアンスがあると思うのだが、今そこで人が動き、演じ、あるいは歌い、それを見る者の感情を何かしらかき立てるという事件が発生している、それが現場である。
とすると、ふつう映画館は、そこで舞台挨拶でも行われていない限り現場とは呼べない。フィルムの中の役者たちは、意思を持って演技の強弱を調整したり、観客の反応を見たり、ハプニングを起こしたりしないからだ。
しかし、ヒプステシネマエディットはそこに現場があった。なんなら、3面スクリーンに関して言えば『現場以上の現場』があった。
この体感を言葉で伝えるのは難しいのだけど、言うなれば、「全景映像」「そのシーンの主役固定カメラ」「そのシーンの名脇役固定カメラ」が常に一挙放送されているイメージである。
「え、でもそれだと目移りしちゃって、結局目が足りなくなっちゃうんじゃない?」
わかる、言いたいことわかる、わたしも同じことを思っていたし観終わった今もどうしてあの情報量を二時間吸収し続けられたのかわからない。けれど3面ライブスクリーンというのは、3面の情報がなぜか丸ごと脳に注入されてくる。
目が足りなくならないし、「え、今のシーンはあれ映してよ!」が一切ない。少なくとも、今回の公演は生で2回観た経験のあるわたしが一切なかった。
とにかく『現場以上の現場』とはなんなのだ!?がヒプステ映画では体験できる。
こんなに手軽に見られるのは今しかない
ヒプステを舞台で見ようとすると、チケットが12000円する。
この12000円は昔は18000円だった…というのは置いておいて、価格がいくらにせよそいつはだいたい開始10分で元が取れるという仕様になっており(冒頭から演出がすさまじい)、あとの1時間50分はひたすらお釣りが返ってくる状態ではあるのだが、それでも未知のものにポンっと気軽に出せる金額ではない。
しかし、同クオリティの現場体験が今なら3600円で味わえる(3面スクリーン)。通常シネマ版ならなんとたったの2600円だ。
ヒプステの公演期間中の生配信がだいたい2000〜4000円することを考えてもお得感があるし、そもそも「生配信より練られたカメラワーク」「巨大スクリーン」「ふかふかの椅子」の3点セットで味わえることを加味したら、もはやお釣りを通り越して預金に利息がつき始める。
作品としてとっても面白い!!
最後に、当たり前のポイントを書くが、今回のヒプステ映画は作品としてめちゃくちゃ面白い。
ストーリーはテーマがわかりやすく、キャラクター同士の対立に感情移入しやすい。ヒプマイというのはとかくバトルをしがちなストーリーであるが、彼らがこの作品の中で戦う理由が明確に示されているので納得がいくし、終結後のカタルシスもある。「おもしろかったなー!」「いい話だったなー!」だけ思って帰ってもらうためにも、映画をぜひ見てほしい。
そうは言っても、設定やキャラクターを全く知らなければさすがにわからないところも多いと思うので、ざっくり説明してみたい。
まず、ヒプマイの世界観。
時代は、今より少し未来だと思われるH歴。大戦後、武力による戦いが根絶された世界の話だ。我が国では男性が政界から引きずり出され、女性が政権を握っている。
武器の代わりに「リリックの強さを攻撃力に変換できる機器」である『ヒプノシスマイク』の所持が許可され、3人1組制のディビジョンラップバトルなるトーナメント戦が政府公認で行われている。
そして、今回の映画に出てくる2チームはそれぞれこんなメンバーだ。
イケブクロ・ディビジョン”Buster Bros!!!”。山田一郎、山田二郎、山田三郎で構成される、未成年三兄弟チーム。
彼らは幼い頃に母親と死別、そして父親とは離別しており、養護施設育ちだ。現在は、家業の便利屋を営み街の治安を守りつつ、ラップバトルに参戦している。
三人の中でもとくに長男の一郎は、かつて伝説と呼ばれたチームの一員だったほどラップの実力がある。
そしてオオサカ・ディビジョン”どついたれ本舗”。元・大人気漫才コンビ『どついたれ本舗』の白膠木 簓(ぬるで ささら)、躑躅森 盧笙(つつじもり ろしょう)の二人に、詐欺師・天谷奴 零(あまやど れい)が加わったチーム。
素性の怪しい零だが、彼の本名は山田零、つまりイケブクロ三兄弟の実の父親である。
一方、簓と盧笙の二人も、かつてのコンビの解散にそれぞれわだかまりを抱いている。
このくらいざっくり押さえておけば、話にはついていけるはず。
あとはとにかく実際に見て、『ヒプステ』を体感してください。
おまけ
書ききれなかった「映画のここよかったなー」を羅列したい。
- 前説ある!トヨタカ兄!ここが現場であると実感した瞬間よ!この前説のそわそわそしてゾワゾワこそヒプステ
- 特に照明の演出が3面良すぎたな
- いつも目が足りなくて見られない歌詞演出まで読める、読めるぞ…!
- 零さんの衣装のテロテロ、もはや4D(???)
- DDBが全員見える!表情までエンターテイナー!KENTAさんのヘッドスピン接写はもはや精密すぎてどこか工場の製造風景を思い浮かべるほどの芸術品(伝わるのかこの例え)
- 躑躅森盧笙が躑躅森盧笙で躑躅森盧笙だった…生きてた…二次元キャラクターが人間の呼吸をして生きていた 伝われ
- そしてじろーちゃん!もう見ながら「あなた本物の二郎なんでしょ?だって本物じゃん!好き!」と何度叫んだことか
- (前キャスト)秋嶋くんの三郎もほんとに好きだったけど、今回キャストの永島くんもやっぱりとてもいいね… 愛らしさと憎たらしさ、そして強さのバランスが天才
- 高野一郎、見ているだけで元気になる すばる兄も見てるだけで元気になれるし、やっぱりいっちゃんは強いなぁ…(なぁカズ)
- 終演後コメントまで簓が簓 どこまでも愛らしい人だな
あと、映画の正式名称は「『ヒプノシスマイク –Division Rap Battle-』Rule the Stage 《どついたれ本舗 VS Buster Bros!!!》- Cinema Edit –」でした。一生覚えられん
↑とてもすてきな感想!わたしもこの文章を読んで慌ててチケット取りました
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